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甲府地方裁判所 昭和58年(わ)62号 判決

本籍

山梨県西八代郡下部町大磯小磯六五五番地

住居

右に同じ

会社役員

伊藤輝一

大正一二年五月三〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官牧義行出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円に処する。右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山梨県西八代郡下部町大磯小磯六五五番地において、全日本哲理印相研究会開運堂の名称で印章販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五四年分の実際総所得金額が二七六九万四三四円あったにもかかわらず、昭和五五年三月一五日、所轄の鰍沢税務署において、同税務署長に対し、昭和五四年分の総所得金額が二三八万一二四三円でこれに対する所得税額が五万一四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額九九六万九〇〇〇円と右申告税額との差額九九一万七六〇〇円を免れ

第二  昭和五五年分の実際総所得金額が五〇七六万三七一五円あったのにかかわらず、昭和五六年三月一六日、前記鰍沢税務署において、同税務署長に対し、昭和五五年分の総所得金額が二四七万六一二〇円でこれに対する所得税額が一五万九三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二三九九万五五〇〇円と右申告税額との差額二三八三万六二〇〇円を免れ

第三  昭和五六年分の実際総所得金額が六〇一六万七五二八円あったのにかかわらず、昭和五七年三月一五日、前記鰍沢税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額が二四七万八四九八円でこれに対する所得税額が一二万二〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額二八九〇万八二〇〇円と右申告税額との差額二八七八万六二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する昭和五八年二月一五日付(二通)、同日及び同月二二日付、同月二二日付(四五丁のもの)各供述調書

一  被告人作成の青色申告承認申請書謄本

一  鰍沢税務署長作成の「証明書」と題する書面

一  大蔵事務官作成の売上調査書及びその附属書類(三通)、期首商品たな卸高調査書、期末商品たな卸高調査書、検査てん末書、臨検てん末書、仕入調査書、租税公課調査書、荷造運賃調査書、水道光熱費調査書、旅費交通費調査書、通信費調査書、広店宣伝費調査書、接待交際費調査書、損害保険料調査書、修繕費調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、福利厚生費調査書、貸倒金調査書、外注工賃調査書、郵便為替料調査書、雑費調査書、専従者給与調査書、専従者控除調査書、青色申告控除調査書、農業所得調査書並びに利子所得調査書

判示第一及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の決算手数料調査書

判示第一及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の給料賃金調査書

判示第一の事実について

一  押収してある五四年分所得税青色申告決算書(昭和五八年押第二一号の一)、五四年分の所得税の確定申告書(同号の二)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の計算誤り調査書、車両売却収入調査書、車両売却原価調査書、給付補てん金調査書

一  押収してある五五年分所得税青色申告決算書(昭和五八年押第二一号の三)、五五年分の所得税の確定申告書(同号の四)

判示第三の事実について

一  押収してある五六年分所得税青色申告決算書(昭和五八年押第二一号の五)、五六年分の所得税の確定申告書(同号の六)

(法令の適用)

被告人の判示第一及び第二の各所為は、昭和五六年法律第五四号「脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律」附則五条により同法による改正前の所得税法二三八条に、判示第三の所為は所得税法二三八条にそれぞれ該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一ないし第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 大野市太郎)

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